火花を見ました

18の時の俺は光輝いていた

専門学校へ進学、18歳、夢の一人暮らし、新しい友達、新しいアルバイト、都会、楽しい事しか考えられない頭の中では人生への不安なんてまるでない

流行る気持ちを抑えきれずに部屋の内装を考えたり、SNSで同じ学校へ進学する友人を作ったり、学校付近のアルバイトを検索したり(まだ新潟にいるのに)

友達や親戚に「俺大阪行く事になった」と言うのが楽しくてしょうがなかった。18歳なんてのはそれだけで大人になった気持ちになれる

大阪へ発つ前に友人とした飲み会はとても寂しかった、というのは嘘で

それぞれ次のステージが決まって心躍っているのだからワンピースの宴みたいなもん

ウェイしか言えない俺達も疲れ果て、二次会のカラオケで皆が歌ってくれたケツメイシが少し胸に染みながらも心はもう大阪にいた

9時間の車移動の果てについに到着する。6帖の狭い部屋に無限の可能性を感じながら初めてオヤジの泣き顔を見た。少しだけ心が地に足に付き、”やるぞ”と、俺の一人暮らしは始まる

 

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なんだこれ?同じ日本か?

見るもの全てが新しい。賑やかな街に若者の群れ

学校には同じ夢を持つ似たような趣味の同世代。道に迷いながら行った学校説明会の日に適当に声かけた近所に住む奴と2人でスーパーの肉を焼いて食べる。次の日は5人、その次は10人で飲み会、やがて男女で8人ぐらいのグループに落ち着き爆速で”たこパ”童貞を卒業した

 

19歳が人生一番楽しいでしょと常々言っている俺だが、本当にそう思う。俺は世界で一番人生楽しんでると思っていたけれど、多くの19歳がそう思っていたのではないだろうか?

楽しいぞ~新生活は。楽しすぎてずっと付き合ってた彼女と別れた

1年もして学校も落ち着きだしたら新しい女と同棲してた

バイトが本業になる

学校?知らん

女とも別れる

都会に飲まれたというか、ただ都会に行きたかったのかもしれない

 

 

前置きが長くなりすぎたが、OKAMOTO'Sの「BROTHER」という曲に食らって芥川賞を受賞したピース又吉の「火花」、ドラマを見たので軽い説明と感想を書く。ネタバレ

 

半端者の俺とは違いお笑いに全てをかけた”徳永”という男が主人公で、「スパークス」というコンビ名でお笑い芸人を目指す途中たまたま行ったライブで「あほんだら」というコンビの先輩芸人、神谷に魅了され、弟子にしてくださいと頼む

俺の伝記を書け、という条件で弟子になった徳永は、それから神谷と行動を共にする事になるというストーリー

 

【徳永】少し引っ込み思案だが笑いには真剣で、内に秘める火を「絶対に成功してやるぞ」と燃やす男

【神谷】芯のある男。客にウケなくても自分のスタイルを曲げない。自信満々のその佇まいはとにかく男として格好いい

【山下】スパークスの相方。台本は全て徳永に任せていたりとちょっと頼りない相方だが、徳永のセンスを信頼し同じく「絶対に成功する」という気持ちで長年コンビを組む

【真樹さん】大阪から出てきた神谷を居候させてくれてる女性

 

一言で言うと”リアル”だった。Hiphopで言うリアルだ

本物のお笑い芸人が書いたからというか、終始凄く独特な雰囲気に包まれている

絶対に成功するという気持ちがまるで火花のようで、それでいてダメなところもしっかり映してくれるところがとてもバチバチだった

まずこの神谷のメッキが剥がれていくところが良かった。メッキが剥がれると言っても、錆びているとは限らない。完璧な人間なんていない。お笑いに対してはブレないにも関わらず自分の事好きな女に居候させてもらってたり、後輩には絶対おごるというお笑い芸人の縦社会の裏で借金のビルが建っていたりとダラしなさが人間味を感じさせた

真樹さん、よかった。初めて徳永が会った時は神谷とまるで夫婦のような仲睦まじさで登場した真樹さん。表情からは優しさが溢れ出していて、キャバクラで働き神谷の財布にこっそり札を入れるという出来た女…が、いつしか神谷に愛想を尽かし別の男と一緒に住むところがめちゃくちゃ良かった。俺じゃなくてちゃんとした男と付き合い~と居候しながらも付き合うのは拒んでいた神谷が、家追い出された後「俺、真樹の事好きやってんなぁ」と泣くところで俺も心が泣いた

徳永の事を弟のようにかわいがる夫婦みたいで、何かあるたびに3人で鍋つついてた日常も壊れる。でもそうしないと真樹さんは幸せになれない。そのどうしようもないところにリアルさを感じた

 

お笑い編もよかった。スパークスとして一生懸命ネタ合わせをしていた徳永と山下だが、ついにイケるかも?というところで4位に終わるコンテスト。芸人からは評価されるが審査員にウケないあほんだら。事前準備が全て失敗に終わるが運に味方され大ウケしなぜか優勝するガイジみたいなピン芸人。上下関係みたいなしょうもないところでしょうもない事になるなんとも煮え切れないところもうまく表現していたと思う

夢を持ち上京してきた一人の若者の、夢のたたみ方までをきっちり表現してくれてハッピーエンドでは終わらない物語でもうまく納得行く結果になった

 

個人的に一番きたシーンはお笑い芸人を諦め不動産屋に就職した徳永が、家を見に来た若者に「俺らお笑い芸人なるんスよ!絶対有名になるんで!」と言われる場面である

都会に出てフリーターしていた俺とリンクしてしまった

 

これも都会。夢つかむばっかりのドラマはもういいわ。都会のスポットを浴びない側を見たい人は是非見て見て欲しい

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